レイトで、4DXではない通常上映を見てきました。
Twitterでも言ったけど、この映画は樋口監督でありながら、平成ガメラのような怪獣映画としてのカタルシスはありません。これまでのゴジラシリーズとは一旦切り離して見ないとならないです。
むしろ「未曾有の災害が発生した時に国家は、政府は、政治家はどう振舞うのか」が描かれています。
キャッチコピーの「ニッポン（現実）vsゴジラ（虚構）」は、まさにこの通りです。
以下、ネタバレ注意。
東京湾を漂流する個人所有のプレジャーボートが見つかるところから話は始まります。このボートの所有者は船内にはおらず、キチンと靴は揃えられており、テーブルの上には何かの文書と折り鶴。
「私は好きにした。君たちも好きにしろ」
そこに発生する東京湾内の水蒸気爆発。アクアライントンネルの崩落浸水。
すぐに政府は災害対策会議を招集し、発表内容と対策を講じ始めます。海底火山による水蒸気噴出という結果ありきで。途中「生物である可能性」を発言した矢口（主人公）が叱責されるなど政府の初期対応の情けなさが見せつけられます。
しかし、水面から出現した「生物のしっぽ」らしきものがテレビで報道されると一転、会議は中止となり、改めて未確認生物の対応のための会議が招集される。このあたり会議をしないと何も進まない日本の政治の面倒くささが・・・。
議員も官僚もその辺のスピードの出せなさ加減を嘆きますがこれが「現実」。それでも裏方は最速で物事を進めていきます。
そして巨大未確認生物は東京湾から羽田横を抜けて大田区の小さな川を遡上。川面に停泊している船舶を押し上げながら進んでいきます。このシーン、明らかに3.11の津波をイメージさせる意図があります。
政府の有識者会議では全く役に立たない御用学者に呆れ、環境庁内の無名の「少しでも詳しい者」が呼ばれて意見を述べるものの、あまり参考にされない。
「蛇行が原則ですが歩行も補助的にみられます」
「生物学教授の意見では、水中生物が上陸しても自重でつぶれてしまうと」
「いえ、すでに自重を支えている状態だと思われます」
なのに政府会見で「上陸はありえない」と発表してしまいます。
そうしているうちに巨大未確認生物は上陸し、車を押しのけながら世田谷区へ向かっていきます。ここで初めてその生物の姿をスクリーンに表すのですが、
「ゴジラじゃない！！ なんだこれ！？ 気持ち悪い」
というファーストインパクト。え？ゴジラはこれと戦うのか？それともこれがゴジラに成るのか？
水中から陸上に上がり、多数のエラ蓋から真っ赤な体液を吐き出して2足歩行に移行した時点で、いずれこれがゴジラに成るのだろうと予測が付きますが、それでも前足はまだないし、エラは機能していないだろうけどまだ存在しているしで、まあ気持ちの悪い生き物に仕上がってます。これを第2形態といい、さらに直立して腕が生えた状態を第3形態と呼ばれています。
多分、ここが54年のゴジラと同じ原体験をさせてくれる部分だと思います。ここは過去にゴジラが来たことがない世界で、作品内の人と同じ感覚を観客に感じさせることができているのだと。
このあたりから政治家も格好良く見えてきます。第3形態時、住民が避難しきれていないことが判明した時に、総理が攻撃中止を決断する時のセリフ「自衛隊の銃を国民に向けることはできない」は、自衛隊という組織の意味を作品内でキッチリ定義してくれています。
あとは自衛隊の活躍ですね。ヘリの機銃、ミサイル、10式戦車による射撃、その全てが全弾命中。もっとも、第4形態になったゴジラには全くと言っていいほど効果はなかったのですが。でも格好良かった。
東京駅付近でアメリカ空軍による攻撃は効いたものの、ゴジラの熱線で全て迎撃され、総理をはじめ主立った閣僚が全員死亡。一時的にゴジラの活動は停止（エネルギー切れってとこがエヴァっぽいかも）するものの、活動再開予定時刻前に国連軍による核兵器攻撃が決定。国際政治の力関係がここでも出てきます。
巨大生物災害対策本部（略して巨災対）に集まっている異才鬼才の面々は、ゴジラのエネルギー源が未知の元素による原子炉のような器官によるものであり、血液による冷却が必須であるためこれを凝結させることで自動的に器官を停止状態に陥らせることができると予想。血液凝固剤を開発し、ゴジラに「経口投与」するという作成を立てます。
ここだけは「えー？？、飲ませるの？ 120m近い体高だぞ？」という感じです。
しかし、世界中のスーパーコンピューターを並列接続して化学式の計算をさせたり、日本中の製薬メーカーに凝固剤の製造を依頼するところとか、これは「ヤシマ作戦」ではないか！ 総力戦はやっぱり燃えます。
BGMの効果もありますが、これはエヴァであると。エヴァで描きたかったことを、特撮でやりたかったことに重ねて作ったのではないかと、そう思えました。
ラストシーンの静止したゴジラのしっぽの先から剥がれ落ちそうな「人型の何か」はいったい何なのかは、もう1回見て確認したいと思います。
